昨年の新刊図書『祖父たちの昭和―化血研創設期の事ども―』の紹介
この新刊書は昨年に熊本の出版社から発行されたものです。次は著者自身による紹介ページへのリンクです:
www.facebook.com筆者(私)の個人的な感慨であるとか、触発された問題などについては次の二つのブログで取り上げました:
ここは一般的な書評の場でもなく、文学作品として私は論評するような立場にもありませんが、科学一般との関連で本書の意義を整理してみると、いくつかの点で意義深いものがあるように思います。その一つとして私自身が触発されて上記サイトで取り上げた問題以外に次のようないくつもの意義が考えられるように思います。
- 特定のキーパーソン(太田原豊一、化血研創設者、著者の祖父)を一つの切り口とした戦前・戦中・戦後の科学史、特に医学と細菌学の歴史的一局面として。
- 医学と医療産業の歴史における熊本県と熊本大学が果たしてきた役割など。
- 最初期の35mmカメラで撮影された集合写真や家族写真の資料。(アメリカのコダック社のレチナというカメラ。ちなみにWikipediaで調べてみるとドイツコダック社の製造販売とされている)
- 日本の戦前・戦中・戦後とアメリカとの関わりにおける研究資料として。終戦直後には日本がGHQの支配下に置かれ、化血研もGHQの影響と支配を受けた。その時期に撮影されたとも考えられる著者の祖父を中心とした複数の化血研関係者とアメリカ人らしき人物を含む集合写真が、実際には開戦より数年前に撮られた可能性が出てきたことが持つ意味など。これについては著者が本書への補遺として次のサイトを公開している:「祖父たちの昭和」補遺。
- 昭和21年に記述され、残された祖父の日記中で示唆される謎の隠された事件(陰謀)の可能性。世の中に謎の事件はいくらでもあるが、時と場所と諸々の状況に鑑みて普通ではない重要性が考えられる。
今日はちょうど令和時代最初の日になりました。この日に、平成として終わる最後の年に発行されたこの書物の紹介をすることに、多少の意義を感じないわけでもありません。