ブログ・発見の発見/科学と言葉 [2006年12月~令和元年まで]

2020年6月22日、本サイトの更新と過去の記事はhttp://yakuruma.blog.fc2.com/ に移転しました。当面、令和元年までの記事が残されています。

以前のタイトル:ブログ・発見の「発見」―科学上の発見から意味を発見―

2007年に本ブログを開始したときは、ウェブサイト上の科学に関するニュース記事(BBCニュース、ニューヨークタイムス、および日本の有名新聞サイト)に関するコメントとして記事を書き始めました。現在、当初のようにニュース記事に限定することなく、一般書籍や筆者自身の記事を含め、本ブログ記事以外の何らかの科学に関わる記事に対するコメント、具体的には感想、紹介、注釈などの記事を書いています。(2019年4月)

非光沢PCディスプレイ画面に光沢塗装することで得られる目覚ましい画質向上

このブログでは今回が初めてですが、ちょっとした技術的な試みについてレポートしたいと思います。技術的な実験とはいっても、中味はだれにでも考えられそうなことで、実際にすでに実行している方々もあるのでないかと思います。しかし個人的に非常に目覚ましい効果が得られたので、こういう方法がもっと普及しても良いのではないかと思えるし、科学技術的にも興味深い問題を含んでいると考え、本ブログで公開することにしました。まず下の2枚の写真をご覧ください。

両方の写真に写っているのは同じもので、手前のノートパソコンの向こう側に大型のディスプレイを後付け追加したものです。どちらも昨年に購入したもので、いずれのディスプレイも4Kですが、ノートパソコンの方は光沢画面であるのに対して後付けの大型ディスプレイは非光沢つまり艶消し画面であったものに水溶性の「つやだしニス」を刷毛で塗った状態です。塗装する前の状態は写真に撮っていないのですが、とりあえず、塗装で得られた効果についてご報告したいと思います。

定量的に一言で表現すれば、元の艶消し状態と完全な光沢ガラス面との中間であると言えますが、実際には両者の長所のみが強化され、両者の短所が共に軽減されているといっても過言ではないでしょう。一例として次の写真を見てください。

赤い矢印の先は塗り残した部分です。こうしてみると、艶消しが残っている部分には右に映りこんでいるランプの光が拡散し、視覚的には映り込み部分と殆ど変わらないほどの光を反射しているのに対し、下の塗装面は事実上画面の黒さがほぼ維持されています。こういった個所を含め、塗装面を正面から見る限り、少なくとも光沢ガラスと同程度の乱反射防止能力は得られていると思います。実際に絵や文字を映した結果もその通りで、画面を正面から見る限り手前のノートパソコンの光沢面にくらべて遜色のない鮮明さを得ていると感じました。

一方、上の2枚の写真に戻ってみると、どちらにも上方の2つのランプはもちろん、やや明るい部分の映り込みが見られます。しかし映り込みの明瞭度に加え明るさの点でも、塗装面では光沢ガラス面に比べてかなり緩和され、穏やかでノイズ感が軽減されています。加えて光沢ガラスの方では四方に光芒が見られますが、これは多分ガラス下部の液晶構造によるものでしょう。上のディスプレイではその替わりにちょっとした笠のようなものが見られます。おそらく液晶組織の大きさや構造によるもので、塗装とは関係がないかもしれません。いずれにしても後付けディスプレイの塗装面の方が穏やかなことは確かです。

塗装は水彩絵の具用として販売されている「水溶性つやだしニス」というアクリル系の製品を刷毛塗りで行いました。下は最初に現在はあまり使用していない古い17インチディスプレイで試し塗りしてみたものです。下の写真のとおりです。

上の、4Kディスプレイの方も塗り方が下手で相当にムラがありますが、こちらは初めて塗っただけあって、ある意味でさらに汚い表面になっていますが、使用感には全く影響はなく、画像でも文字でも以前に比べて一段と鮮明で美しい諧調表現を得ています。塗りムラも手作業の跡が、自分で塗ったせいもあり、大げさに言えば手作りの温もりのような効果で、かえって心地よいくらいです。明るい物体が映り込んだ場合などにはムラが強調されますが、光沢ガラスの映り込みよりもずっと穏やかで、ムラ自体はかえって愛嬌というか、面白みになるくらいですね。以下、結論に加えてその他いくらかの考察を行ってみたいと思います。

  • 現在、液晶ディスプレイに通常使われている非光沢ガラスの表面は、光沢ガラス面に比べてむしろ弊害の方が大きいのではないかと思われる。明確な映り込みは防止できるものの、有害な反射面はむしろ拡大される傾向がある。
  • 非光沢に比べて光沢ガラスのほうがカラー画像の画質向上はもちろん、文字の読みやすさにおいても優れている。例えばMS明朝のように線が細く白っぽいフォントの場合、全般にPCディスプレイでは全体が明るすぎて眼にも負担が大きくなるが、非光沢画面の場合はさらに細い線がやや拡散するような傾向があってなおさら読みづらく眼の負担になるのではないかと思う。少なくとも個人的な印象ではこの点でも光沢面の方が眼に優しく、眼の疲労が軽減される。
  • クリア塗装は、少なくとも非光沢ガラス面にアクリル系水性塗料を使用した場合、光沢ガラス面に比べて遜色のない画質向上の効果が得られ、映り込みにおいても、光沢ガラス面よりも大幅にノイズ感が低減される。
  • 上述の塗装はムラのある稚拙な手塗りでも全く問題なく効果が得られ、完璧な平面度の光沢ガラス面に比べて心理的にはむしろ良好な影響をもたらすのではないかと思われる。これは芸術心理の領域ともいえるが、大げさに言えば油絵のマチエールのような効果、あるいは工芸の手作り感のようなメリットもあるのではないだろうか。
  • 今のところ個人的な印象にとどまるが、現在の非光沢ガラスの乱反射は量的にも質的に最適化されているとは言えない。同じ乱反射でも紙などの乱反射に比べて何らかの規則性があり、この規則性がノイズ感を生み出しているような印象がある。

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専門的にはもっと高度な解析も、思い付きとしても、もっと多面的に考察できると思いますが、とりあえずこの程度で十分でしょう。ちなみに、使用した塗料は上記のとおり水彩絵画用として500円で市販されているものを用いました。水彩画ではないので水で薄めて問題なく使用できました。ディスプレイを立てて塗ると塗装面がだれ落ちるので水平にして塗る必要があります。刷毛の毛抜けにさえ注意すれば特に難しくはないと思います。

なお、PCディスプレイが眼の疲労に与える影響については別のブログでも最近、取り上げています
http://takaragaku.blogspot.com/2017/09/pc-el.html

そのうち、ノートパソコンの光沢ガラスの方にも塗ってみようかと考えています。
以上。