スペイン風邪研究と鳥インフルエンザ
1918年のスペイン風邪ウィルスを再生させ、猿に感染させた研究結果のニュースが、日米英各誌いっせいに発表された。病状の重症化の仕組みが解明され、同時に鳥インフルエンザとの類似性が確認されたということである。このニュースに対して次のような感想を持った。
◆重症化の原因が最終的に免疫力低下にあることは各紙共通しているが、その詳しい内容はそれぞれ表現が異なり、異なった用語が使われており、素人が正しく理解するのは難しそうに思えた。
◆アラスカで発掘された、犠牲者の遺体からスペイン風邪ウィルスが再現されたことは各紙で述べられている。ただ、NYタイムズだけが、これが2005年に米軍の科学者によって行われた仕事であることを報じている。軍がこの様な研究をしているということになると、細菌兵器を想像せざるを得ない。
◆現在の鳥インフルエンザはまだ人間に広がるようにはなっていない事がスペイン風邪と違っている点であろうけれども、それでも鳥インフルエンザの重症化のメカニズムは鳥インフルエンザウィルス自体で研究できないのであろうか。スペイン風邪ウィルスを復活させる必要は本当にあったのだろうか。素人の疑問ではあるけれども。
◆この研究はカナダの研究機関の主導で行われたようで、BBCニュースやNYタイムズでは、米、カナダ、及び日本人研究者の談話をバランスよく取り入れているように見える。それに対し、日本の記事では東大教授としての河岡教授の名前を出しているだけであり、とくに読売の記事ではアメリカとカナダの国名すら触れておらず、日本の国内でなされた研究のような印象になっている。NYタイムズの記事では河岡教授も米国大学におけるウィルス学者として紹介されており、実施のところ、この研究も米国での研究なのだろう。