海馬の機能
先月に引き続き、NYタイムズに海馬の機能に関わる記事が出た。
http://www.nytimes.com/2007/01/23/health/psychology/23amne.html?ref=science
ウェブサイトhttp://www.ne.jp/asahi/qz/jtnk/sci/hakkentop.html
に書き入れた要約を再録すると次のとおり。
――海馬の機能に関わる研究で、やはりNYTの、昨年12/18の記事に関わりが深い。海馬は、一旦ある記憶内容が確立した後にはそれを思い出すのに特に必用とはされていないと考える立場がある一方、海馬に損傷を受けた記憶喪失者に関する新研究によれば、未来に関する思考においても重要な役割を担っていると考えられる。海馬は思考の素材に時間と空間の枠組、いわば俳優たちにドラマの筋書きを与えるようなものだというのである。状況を思い描く機能において海馬が関わっているかどうかは記憶研究のフロンティアであるという。――
この記事のもととなる研究は記憶喪失者の研究で、脳の障害による記憶喪失者のイメージ生活がどのようなものであるかということに関する厳密な研究としては最初のものだと言っている。一言で言えば、過去の記憶をイメージとして思い起こすことも、未来をイメージすることも、脳内の同じネットワークを使っていると言っているようである。
とにかく、記事にも書かれているが、海馬の研究は脳研究、特に記憶の研究のフロンティアのようである。しかしこの様な研究は研究するのも表現するのも、本当に言葉での表現が難しいものであるように思われる。言葉にしなければ表現したことにならないのであるから、当然といえば当然であるが、こういう研究は同時にまた表現力の限界に挑戦するようなものではないだろうか。とにかく説明は必然的に比喩的表現の連続となる。
とにかく脳研究では実験あるいは調査内容そのものとその解釈と表現には断絶があり、色々と誤解、誤認、あるいは立場の異なった幾つもの考えかたが成立し得るように思われる。いずれにしても難しい。