ブログ・発見の発見/科学と言葉 [2006年12月~令和元年まで]

2020年6月22日、本サイトの更新と過去の記事はhttp://yakuruma.blog.fc2.com/ に移転しました。当面、令和元年までの記事が残されています。

以前のタイトル:ブログ・発見の「発見」―科学上の発見から意味を発見―

2007年に本ブログを開始したときは、ウェブサイト上の科学に関するニュース記事(BBCニュース、ニューヨークタイムス、および日本の有名新聞サイト)に関するコメントとして記事を書き始めました。現在、当初のようにニュース記事に限定することなく、一般書籍や筆者自身の記事を含め、本ブログ記事以外の何らかの科学に関わる記事に対するコメント、具体的には感想、紹介、注釈などの記事を書いています。(2019年4月)

脳の「島」

1/25付けのNYタイムズBBCニュースに、脳内で「島」と呼ばれる部位に障害が起きると煙草依存症が治るという発見の記事が掲載されたが、今月の2/6にはやはりNYタイムズで、その続報というか、解説記事が掲載された。http://www.nytimes.com/2007/02/06/health/psychology/06brain.html?ref=science
部分要約はウェブサイトの方に。http://www.ne.jp/asahi/qz/jtnk/sci/hakkentop.html

解説としてはWikipediaの記事http://en.wikipedia.org/wiki/Insular_cortex
の方が量的にも同じ程度であり、整理されていてイラストもあり、分かりやすい。この項目はinsuraではなくInsular_cortexとなっている。日本語でも「島」と「島葉」と二通りの記述法が有るらしい。英語ではInsular lobeとも書けるようだ。英語のinsulaはともかく、日本語の「島」ではかっこでもつけない限り、脳の部位であることが直ぐにはわからないので「島葉」のほうが良いのかもしれない。しかし語感としては「島」の方にも分があり、両方使用されているのも分かるような気がする。

最初の煙草依存との関連が発見されたという、NYTとBBCの2つの記事と今回のNYTの記事、それぞれに当然、多少の相違がある。BBCの生地では、この部位に同じように障害が起きていても煙草依存が直っていない例もかなりあることが報告されており、その理由はわからないとしている。それはそうで、煙草依存が直った理由も完全にわかったわけではないのだから当然だろう。

最初のNYTの記事に、煙草依存に関わる部位があるとすれば意思決定と思考に関わるとされる皮質の部分だろうと想定されていたのがそうではなくて内臓の感覚に関わる島という部分であったというくだりがあった。しかし、皮質の部分が意思決定と思考にどのように関わっているのか、知る由も無いけれども、とにかく意思決定と思考に関することではなく、内臓感覚に関わる脳の部位に関わっていたということは素人目にも納得のゆく話である。というのも、決断とか意思の力で煙草を止めるという、意思決定に脳の特定部位の機能が直接関わるということは、少なくとも個人的には考えられない。そして内臓の感覚に関わる部分が関係していたというのは分かるような気がする。私は過去に煙草を吸っていた経験があるが、喫煙時の感覚に内臓が関係していたことははっきりと感じていた。

それにしても脳の島葉という部分のことは今回の一連のニュースで初めて知った。やはり最近のニュースで話題になっている海馬の方は、名前だけは知っていたのに対し、島葉の方は、はっきりと存在を知ったのは始めてである。また海馬と同様、最近とくに注目されてきている部位であることも初めて知ることが出来た。

海馬関連、島葉関連、共にこれからもサイエンスニュースで続報が続きそうである。

ちなみに今回のNYTの解説記事では人間と共通するVENsという高度な機能を持つとされる部分について、類人猿と共にイルカと象が挙げられていた。Wikipediaの方にはイルカと象のことは触れらていなかった。この辺のところははっきりさせて欲しいものだと思う。これは解剖学的部分なのだから、明確にできる筈である。
ちょうどこのブログとウェブサイト『発見の「発見」』を開設する少し前、NYT、BBCニュース、そして日本のニュースサイトの全てに象とイルカの「鏡像認識」に関する記事が出た記憶が新しい。