科学ニュースのニュースソース
科学ニュースのニュースソース或いは取材の方法については興味が持たれるところである。最近では恐竜のたんぱく質が分析されたニュースで各社の違いが少し見て取れたように思える。もちろん個々の場合で異なるし、国内外でも違いが出るとは思うけれども。
このニュースの場合、朝日では『ティラノザウルスとニワトリは「血族」 米研究班が分析」』と非常に具体的な表現をとっているのに対し、読売では『「恐竜と鳥は近縁」新たな証拠発見、アミノ酸配列が類似』と一般化した表現をとっている。しかし、朝日の見出しにはない「アミノ酸」が入っている。英米のサイトではBBCの見出しが朝日に近く、『Protein links T. rex to chickens (たんぱく質がティラノザウルスと鶏とをリンク)』となっている。しかしこれにも朝日の見出しにはない『Protein』が入っている。ニューヨークタイムズの記事では『Study Identifies Dinosaur Protein 』と、Protein(たんぱく質)に焦点が当てられている。これは記事の内容にも対応していて、「鳥類が恐竜から進化したことは証明済みのことであって、今回の発見の意義はたんぱく質がこの様な長期間保存されていたことにある」という学者の見解が述べられている。いずれにしても、他の科学ニュースと同様、BBCとNYタイムズの記事は日本の記事に比べて遥かに詳しく、多面的に伝えられている。
日本の二社の記事では、読売の方が見出しで「鳥類」という一般的な言葉を用いており、鶏という言葉は出していないが、記事の中身でも鶏の文字はいっさい出てこない。しかし、内容的には朝日よりもかなり詳しく、たんぱく質の分析に就いて説明を加えている。鳥類と鶏との関係から考えてこれで問題ないのだろうが、それでも具体的には鶏のたんぱく質を用いて分析したということだから、ちょっと物足りない気がする。
一方の朝日の記事は見出しは具体的だが、内容は非常にシンプル。二つのセンテンスから成り、前半は「ロイターなどが伝えた」と締めくくられ、後半は「(時事)」、とことわりがつけられているが、内容的にはこの研究の簡単な解釈或いは解説である。こちらも見出しのインパクトに比べると物足りない。