「ネズミの脳の半分」と「地球」のシミュレーション
(07/04/27) Mouse brain simulated on computer (BBC)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/6600965.stm
BlueGene L というスーパーコンピューターを使ってネズミの大脳皮質の半分をシミュレートしたというニュース。大脳皮質をシミュレートするというのはどういうことか?という難しい疑問はさておき、BlueGene L を調べてみるとこれは現在世界最高のスパコンで、これができるまでは、科学技術庁が開発した日本の「地球シミュレーター」という名のスパコンが世界最高であったとのことである。この「地球シミュレーター」はウィキペディアに詳しく紹介されているが、スパコンの専門的な事はわからなくとも使用資源やエネルギーなどから本当にすごいものであることが分かる。地球シミュレータセンターのウェブサイトには「地球を丸ごとシミュレーションできる」と書かれているが、確かにネーミングにはそういう意味をこめたのであろう。しかし「地球を丸ごとシミュレーション」とはいくらなんでも言い過ぎではないだろうか。
BlueGene L の方は地球シミュレータの10倍の能力を持つそうだが、これでネズミの大脳の半分をシミュレートしたということである。一言でシミュレーション、と言ってもその内容は部外者には全くのブラックボックスである。しかしとにかくこの事実、ネズミの大脳の半分を何とかシミュレートできるスパコンの1/10の能力のスパコンで地球をシミュレートするというのだから、地球をシミュレーションするといってもいかに大まかにしか、わずかのデータによってしか「シミュレーション」していないかということが、あらためて想像できるとも言える。
ウェブサイトのリストに載せた各紙の1日の記事で、北極の氷の減少はシミュレーションに使われた幾つかのモデルによるどの予想値よりも早い速度で進んでいるとの調査結果が報道されている。また4月17日のBBCニュースでは逆の現象として、キリマンジャロの氷が20年程度で消えると予想されていたが、別のデータとモデルによると、2040年を過ぎても持ちこたえるだろうという調査結果を伝えている。
一方、ネズミの脳のシミュレーションの方だけれども、脳をコンピュータでシミュレートするとは一体どういうことなのか、これは気候のシミュレーションと違って原理、考え方そのものが部外者には難しいというか想像しにくいものである。もちろん記事には説明がなされていて、それによるとネズミの大脳の半分は800万のニューロンから出来ていて、その各々が8,000に至るシナプスの結合を持つことが出来る、とあることから、結局そういうシナプスの結合をもつ800万の細胞をシミュレートするということなのであろう。実際には800万ではなく8000のニューロンとしてシミュレートしたそうで、それでも実際の脳よりも10倍遅い速度で10秒間だけ動作したとの事。
内容的には分からない事ずくめだが、ともかくモデリングのプログラムにも機械の性能に関しても相当な負担であったことが想像できる。一定の、今後の研究に繋がる成果が得られたとのことである。