類人猿のジェスチャーと言語
ニューヨークタイムズとBBCニュースで同時にチンパンジーのジェスチャーに関する研究が紹介され、それぞれで多少異なった見方で論議されている。
http://www.nytimes.com/2007/05/01/science/01lang.html?ref=science
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/6610447.stm
BBCニュースの方では他の鳥類なども含めた動物一般に通じる面から論議した別の記事もある。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/3430481.stm
元になったAmy S. Pollick and Frans B. M. de Waal of the Yerkes National Primate Research Center の研究では類人猿のジェスチャーはシンボリックなシステムに移行しうるような性質のものであって、発声や顔の表情によるコミュニケーションよりも後で発達したものであるという結論のようである。
これに対して他の二人の研究者の異なった意見が述べられている。問題が複雑になるのは言語によるコミュニケーションと声によるコミュニケーションとは別物であって、それが一致することも一致しないこともあり、声によるコミュニケーションで言語を意味している場合もあり、言語を意味しないこともあるということだ。
BBCニュースの二つの記事ではまた異なった観点からの論議がされており、こちらも興味深い。一つは右脳、左脳との関連で、同じ手のジェスチャーでも右手の持つ重要性が左脳の言語機能と関係があるという説明はなるほどと思わせる。これは先日の記事にあった犬の尻尾の振りの問題にも関わってくるところが面白い。もう一つの記事では、類人猿では声による表現力が不足しているのに対し、その他の猿類では声による表現のレパートリーが広い場合があることや、犬による人の言語理解能力、音声表現の得意な鳥類やイルカなどに論議が広がり、興味は尽きないものがある。