この2ヶ月間におけるBBCニュースを中心とする温暖化関連記事と根本順吉著『世紀末の気象』、1992年、筑摩書房―とを合わせ読む。(2)
(前回よりの続き)
これらの調査研究は何れも地質時代過去の温暖期の地質あるいは氷質の調査であるといえる。グリーンランドの氷の調査では氷の底の方は45万年〜80万年前となっているのに対し、北極海での調査では、北半球の氷原ができ始めたのはこれまでは300万年前と考えられていたところ、4500万年まで遡らなければならないという、学者の見解が紹介されている。これらの数字が持つ意味は専門家でなければ分らないものだろう。
ただ、当面重要なことは、現在の温暖化の機構を理解するのにこういった過去の温暖期の調査が参考になるかどうかという問題であろう。あるいは参考にならなければ意味がないともいえる。
グリーンランドの方ではDNAが発見されたという事に焦点が当てられているように見える。これはこれで重要な発見であろうけれども、現在の温暖化の解明には直接繋がるようには見えない。この点では北極海調査の方で紹介されている一人の研究者の見解をみると、逆に、現在の温暖化で通用している原理あるいはメカニズムで地質時代過去の温暖化を説明しているように見える。現在通用している温暖化の原理では人為的なCO2排出が原因だから、それにあたるものとして次のような見解が述べられている。「"Basically, it looks like the Earth released a gigantic fart of greenhouse gases into the atmosphere - and globally the Earth warmed by about 5C (9F). (Appy Sluijs, a palaeoecologist from Utrecht University )。」
ここに出てくる「fart」というのは「おなら」の事だそうである。現在の人為的CO2の排出に相当するものが大地の「おなら」のようなものに見えるというわけである。しかし同時に次のようにも述べている。「Appy Sluijs points out that the data reveals that some of the climate models used to detail the Arctic's history got things wrong; and, as they are the same models that predict our future climate, they may need adjusting.」。
『世紀末の気象』ではグリーンランドで行われた氷床のボーリング調査と同様の調査に基づく研究成果が既に検討され、現在の温暖化の機構解明に用いられている。このことを述べた部分は次のような出だしで始まっている。「80年代の古気候学の最大の成果は、南極のボストーク基地で得られた2000メートルの氷柱の分析から、過去16万年の気候変化が明らかにされたことである。」
ソ連とフランスの学者の共同で行われた成果だそうで、その主要な成果として16万年の気候変化とCO2およびメタンの含有量の変化が連続的に測定されたことが取上げられている。そのグラフから著者は、CO2およびメタンの変化は気候変化に追随して、すなわち気候変化の結果として起きていてその逆ではないこと、そしてその平行する変化は地球軌道の離心率の変動、地軸の傾斜の変動周期そして歳差現象の三つの周期に対応することを他の地質的調査とも照合しながら明らかにしている。
今回のグリーンランドの氷柱調査ではこのような分析は行われているのであろうか。行われていないとしても、既に南極の氷柱でこれだけのことが明らかになっているのであれば、現在の人為的CO2主因説はこういう成果を全く無視していることが分る。(次回に継続予定)