鏡像問題 ― 昨日に続けて
鏡像問題と「前後」、特に「前」という言葉の意味との関わりは視覚の本質に関わる問題であるともいえる。逆に鏡像問題と視覚との関わりでは「前」という言葉の意味が重要になってくる。
物理的には人間の眼が前についているという事、あるいは、人間の眼がついている側を前と呼ぶ事が問題になる。鏡を見る眼が人間の前側についており、同時に人間が常に前方を見ているという事である。
これは単に眼という器官の位置という問題ではなく視覚の本質に関わる問題ともいえるのではないだろうか。
そもそも、何かを見るということは、対象の表面を見ることである。表面しか見ることが出来ない。人は自らの眼のある側を前というが、同時に、見る対象の、こちらから見える側をも前という。自らの前と、見る対象の前とは常に逆方向になっている。これは鏡像の場合も実物あるいは実像の場合もおなじである。但し鏡像の場合は虚像である。
ついでに言えば、虚像、英語で言えばヴァーチャル・イメージという言葉の意味も、深く検討すべきかも知れない。