活断層、断層帯、地震活動帯(その3)― 擬人的表現の持つ便利さと陥穽
7月24日に起きた岩手沿岸北部を震源とする地震は地下100キロのプレート内部で起きた地震で、活断層型とは違う発生メカニズムとされており、被害が少なかったために名前が付けられず、各ニュースサイトの科学欄でもあまり取り上げられていないが、例によって読売の科学欄では2本の記事で取り上げられている。
(08/07/24) プレートひずみ解放、活断層型と異なる発生メカニズム (Y)
これによると今回の地震のメカニズムとして次のように解説されている。
「今回の地震の震源は地下108キロと深く、太平洋プレート内部で発生した。太平洋プレートは沖合で、東北地方が乗っている陸のプレートの下に沈み込んでおり、ひずみが徐々にたまっていく。今回の地震は、そのひずみが解放されて発生したと見られる。」
これに対して、先の岩手・宮城内陸地震のメカニズムとしては、「地表にごく近い活断層が動いて発生した。」と説明されている。地震の原因ではなく「メカニズム」としてはこれでも良いのかもしれないが、それにしてもプレート内部を震源とする地震のメカニズムとしての、ひずみが溜まり、それが開放されて発生するという説明の仕方とは全くレベルの違う説明の仕方であり、原因については何も述べていないに等しい。
一般にいつでも、どの記事についても言える事だが、「活断層型」の地震については、殆ど原因らしい原因の説明はなされていない。ただ「活断層が動いた」と言うだけであたかも擬人化された断層が自らの気まぐれで動いたかのようである。
活断層と言う言葉が有名になってよく使われるようになったのは阪神淡路地震以後だと思うが、以前は直下型地震という言葉が良く使われていたのではないだろうか。活断層型地震という言葉が良く使われるようになり、ある面では分かりやすくなった面があるかもしれないが、どうもそれによって地震の原因、詳しいメカニズム言及することを避けるために使われているような気さえするのである。