ブログ・発見の発見/科学と言葉 [2006年12月~令和元年まで]

2020年6月22日、本サイトの更新と過去の記事はhttp://yakuruma.blog.fc2.com/ に移転しました。当面、令和元年までの記事が残されています。

以前のタイトル:ブログ・発見の「発見」―科学上の発見から意味を発見―

2007年に本ブログを開始したときは、ウェブサイト上の科学に関するニュース記事(BBCニュース、ニューヨークタイムス、および日本の有名新聞サイト)に関するコメントとして記事を書き始めました。現在、当初のようにニュース記事に限定することなく、一般書籍や筆者自身の記事を含め、本ブログ記事以外の何らかの科学に関わる記事に対するコメント、具体的には感想、紹介、注釈などの記事を書いています。(2019年4月)

新型インフルエンザのニュースにおける症状の問題

仕事や健康上など個人的な理由でしばらく、特にNYタイムズの科学記事をあまりチェックしていなかったが、改めて過去のニュースを大まかにチェックしてみると、さすがに豚インフルエンザの記事が多い。全体的に日本の記事と同様、かなり情報が錯綜しているという印象はある。ただ、それらの記事の中は、日本のュース記事にはあまりなかったような具体的な症状について触れた記事も幾つかある。次の記事は、内容的には、後にも先にもこの記事1本だけで、日本ではその種の記事が全くないだけに気になる記事である。
(09/05/12) Many Swine Flu Cases Have No Fever (N)

このニュースではメキシコのケースを調査したアメリカの感染病エキスパートによる報告として、メキシコの多くのケースでは発熱が伴っていなかったという意外な事実と、そのためにこのエピデミックを管理することの難しさが述べられている。

意外な内容だったので、グーグルで日本の記事を当たってみたが、個人ブログに同じニュースソースが紹介されている他に、主要なニュースサイトではまだこの問題が取り上げられていないようだ。

この記事によると、メキシコシティーの病院を調査したところ、入院患者の3分の1は熱がなかった。また重症患者の多くは入院後に発熱しつづけたが、中程度の症状の患者の半数は熱がなかった。一方殆どの患者に咳と倦怠感はあったと言われている。また入院患者の12%に下痢があったそうである。またこの期間に入院していた肺炎の患者は通常に比べて異常に多かったこと、その肺炎菌はスペイン風邪の合併症であった肺炎菌とは異なる事などが述べられている。要するにアメリカの専門化もこれにはかなり戸惑っていることがわかる。


この記事を見て思うことはいろいろある。まずこのように発熱がなかったり、症状が軽かったりするケースが多いのであれば、よく比較されるA型とかB型の他に、普通の風邪とも比較する必要があるのではないかと、素人には思えることだ。普通の風邪と症状がそれほど変わらないのであれば、病院を訪れる人など殆どいないのだから、流行の状態とか推移とかが把握できているとはとうてい思えない。

インフルエンザと普通の風邪との違いについて解説される機会は多いが、普通は症状の違いで説明されている。一方で新型を含めインフルエンザ流行のニュースで問題になるのは大抵「型」の問題である。「型」とは要するに分類であり、病原体の識別や起源の問題なのであろう。こういう型の意味と問題を十分に理解出来るのは専門化だけだろう。もちろんこういう専門的な問題も報道して貰わなければ困るが、当面、素人に理解出来るのは症状の問題であり、気になる問題でもある。今回の新型インフルエンザが最初に流行したとされるメキシコのケースでその具体的な症状が殆ど報道されてこなかったのことにはどうも疑問が残る。

一方、普通の風邪の場合、その「型」が問題になったり、報道されたりすることは事実上全くない。しかし今回次のサイトを見ると、普通の風邪についても病原体の名前や型が紹介されている。
http://influenza.elan.ne.jp/basic/cold.php

これを見ると、普通の風邪の病原体でもパラインフルエンザウイルスとか、インフルエンザウイルスCとか、インフルエンザの病原体と関係ありそうな名前も見える。

あれこれ考えているときりがないが、一般人の希望として思う事は、こういう問題は地震と同じで、専門化にも分からないことや把握できないことが圧倒的に多いのだから、万全の対策などできないのが当たり前であって、それを前提に、もっと具体的な事を沢山、とくに具体的な症状について報道あるいは告知して欲しいものだと言うことである。これは報道機関に対しても、オーソリティーに対してもお願いしたいことである。