ブログ・発見の発見/科学と言葉 [2006年12月~令和元年まで]

2020年6月22日、本サイトの更新と過去の記事はhttp://yakuruma.blog.fc2.com/ に移転しました。当面、令和元年までの記事が残されています。

以前のタイトル:ブログ・発見の「発見」―科学上の発見から意味を発見―

2007年に本ブログを開始したときは、ウェブサイト上の科学に関するニュース記事(BBCニュース、ニューヨークタイムス、および日本の有名新聞サイト)に関するコメントとして記事を書き始めました。現在、当初のようにニュース記事に限定することなく、一般書籍や筆者自身の記事を含め、本ブログ記事以外の何らかの科学に関わる記事に対するコメント、具体的には感想、紹介、注釈などの記事を書いています。(2019年4月)

活断層、断層帯、地震活動帯(その2) ―― 岩手・宮城地震

今回の岩手・宮城地震を分析する幾つかの国内記事で、前回触れたような、中国四川省地震で表面化した問題と全く同じ問題が今回の地域の地震予測においても存在していたことが明らかになったようだ。
つまり、特定の断層、この場合は活断層単独の調査結果から判断されていた地震予測が当たらなかったということである。この問題はテレビやラジオなどでも繰り返し報道されているが、ニュースサイトの記事としては初期に出た朝日の次の記事ですでに明確に説明されている。
(08/06/14) 内陸直下の逆断層型 今回の地震のメカニズム (a)
http://www.asahi.com/national/update/0614/TKY200806140104.html

(ちなみに、この記事は見出しから判断しても科学ニュースの範疇に入れるべきものと思われるが、今回、何故か「社会」の範疇に入れられており、科学欄からはアクセスできない。前回の四川地震関連では朝日でも、従来はそうでもなかったのに、比較的多くの地震関連記事が科学欄で取り扱われていた。その後の続報でも、「特集」の範疇で地震の記事が取り扱われ、「科学」ニュースからはアクセスできないのはどうしたことだろうか。また、四川の地震では科学欄で一切これを取り扱われなかった毎日の科学欄で、今回の地震関連記事が多く取り扱われている。読売の科学欄ではいつもの通り頻繁に取り上げられているが、一つ一つの内容密度は少なく物足りない。どうも、各社の傾向、ポリシーがよく分からない。ニューヨークタイムズでもBBCニュースでも、1つの記事に幾つかのカテゴリーが割り振られ、同じニュースがサイエンス欄からも健康欄からもアクセスできるケースなども多い。ニューヨークタイムズではその上、アーカイブに入って有料になっても同じURLからアクセスできるようになっているように思う。)

上記記事にもあるように、今回の震源はよく調査されていたらしい北上低地西縁断層帯の直ぐ南にあり、この辺りでの地震予想に関しては、「地震調査委員会は、北上低地西縁断層帯全体でM7.8の大地震が起きると予測していたが、30年以内の発生確率はほぼ0%と評価していた。一方、岩手県は発生確率は示していなかったものの、出店断層帯単独でM7.3の地震を想定していた。」という引用のとおりである。結果的に北上低地西縁断層帯でも出店断層帯でもない「未知の断層」が動いた可能性があることが各紙の続報で報道され、テレビなどでも地表に現れた断層のような現場の映像が紹介されている。
(08/06/16) 地震断層の段差?道路や田を横切る…奥州市などで確認
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080616-OYT1T00381.htm

素人目には「未知の断層」ではなくてこれまで明瞭に観察できなかったような「新しくできた断層」の可能性もあるのではないかとも思えるが、何処でも「未知の断層」の可能性のみが言われている。


前回にも考えたように、断層とは本来二次元の面であって、活断層とか死んだ断層とか言っても火山のような実体を備えたものではない。火山の場合は活火山とか死火山というような擬人化は便利でかなり実態に即した言葉の用法であろう。しかし断層帯ならまだしも、特定の断層を個別に1つの活動する単位として扱うのは便利ではあっても問題もあるように思えるのである。


前回の記事に対して1つのコメントを頂いた。どうやら中国四川在住かあるいは滞在中の専門家の方からではないかと思われるのだが、それによればニューヨークタイムズで述べられていた1933年に起きた大きな地震は竜門山断層帯とは異なる断層帯が関係していると考えられるマグニチュード7.5の地震であるとのことである。ということは、この地域での地震の可能性を指摘していた専門家は、竜門山断層の歴史のみではなくて、他の断層の歴史をも含めた広域的な地震活動から竜門山断層帯付近の巨大地震の可能性を指摘していたということになり、それが正しかったということだろう。

こうなると、より広域的に多方面のデータを駆使して地震の予測をしなければならないことになり、正確な予測の困難さが増すばかりだろう。そんな中、前回の最後に触れたBBCニュースの記事で紹介されている地震予測への期待が高まるというものである。

これは地震前の地殻岩石の歪みによる電気的現象が上空のイオン層の電気的乱れを引き起こすという現象から、衛星を用いて地震発生地域上空の測定を行うシステムがNASAで完成に近づきつつあるというもので、確定的には述べられていないが、今回の四川省地震の前兆も観測されていた可能性があるように書かれている。
(08/06/05) Plan for quake 'warning system' (B)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7435324.stm

この種の現象と原理、その研究はこれまでに何度もマスコミで紹介されているので日本でも研究が続けられている筈と思われるのだが、日本の現状はどうなのだろうか。

この記事によれば原理的な面で懐疑的な意見もあるようだけれども、今回の四川省地震を含め、現実の多くの地震で確認されているとのことだから、期待して良いのでは無いかと思う。